畳職人のすごいところ① ~お客様との距離の縮め方~

 昨今、個人のお客様の自宅にお邪魔する職業は減少している。

畳職人の仕事は、お客様の自宅に入り、畳の状態や部屋の状態を確認した後、お客様の予算やご要望に合わせた材料を用いて、畳を作り上げる。積蟻畳職人の仕事はまさに「オーダーメイド」の畳を製作することである。製作後に部屋に敷き詰めた畳は、名刺一枚隙間に入らない程の寸分の狂いもない精密な仕上がりだ。

 そんな畳職人は技術を売りにお仕事をされているが、外にも優れているのが「お客様との距離の詰め方」だ。自宅にお伺いするところから始まり、一連の商談を追えて玄関から引き上げる。そのころには、お客様から笑顔で送られる。ものの30分でお客様のハートをつかみ、畳を工場に持って帰るのだ。それを支えているのが、長年の経験に基づく知識と把握力、そして情報収集力であると思う。


長年の経験に基づく知識


 畳は大きく分けて3つの部材から構成されるが、各部材のメリット・デメリットを把握したうえでお客様の気づかぬ潜在的なニーズにクリティカルな提案を行っていく。畳は自然素材であるため、各材料の栽培から生産過程・歴史的なバッググラウンドなどの様々な知識の引き出しを持っている。日頃の情報収集にぬかりがない。お客様やその家族、友人など畳の部屋にはいる人たちを満足させたいという想いが畳職人をあらわすであろう。

当然、世の中に畳の事に詳しい方はマイノリティであるため、知らない事ばかりである。

そんなお客様にも真摯に、畳のメリットやデメリットも包み隠さず説明する。

お客様は自然と畳屋の声に耳を傾け、見入ったように話を聞くのである。

畳職人に知識をどのように得ているのか質問してみたところ、「お客様へ訪問した帰りのトラックでは商談を自分の頭の中でフィードバックし、分からなかったところは素直に認めてる事を収監している」という。そして最後には口癖のように、「職人は生涯勉強である。」

というのであった。


情報収集力

 

 部屋に入った瞬間から、部屋の特徴をつかみお客様のライフスタイルに合致した提案も

お見事だ。畳に使う両端の布を「畳縁」というが、そのデザインの多さにお客様はヘリを選ぶのに悩んでしまうことが多い。それでも、畳職人は常に自身の経験に基づく「その部屋の雰囲気と調和させる」畳縁を提案するのである。部屋の壁の色や日光の当たり具合、足触り、お客様にとっての和室に対する価値観などの様々な要素を部屋に入った時点から察知し、提案に活かしていく。お客様が特段のこだわりがある場合を除いて、畳屋の提案に思わず首を縦に振る。部屋にはいってメモをする様子はない。自宅の前についた瞬間から全集中力を注ぐのである。


おわりに


 現調~ヒアリングを行い引き上げるまでは30分から1時間の間で完結してしまう。

もちろん畳店様にとっては、商談であるので心の持ちようとして戦場に向かうことと表現しても過言ではない。しかし、お客様の家に入っても表情は落ち着いている。お客様にとっても必要以上に堅苦しいと、心苦しくなる。そんな雰囲気にはならないのも、畳職人さんが

短時間で作り上げる空気館なのだ。初見の方とは思わせない畳職人さんは、自宅においで頂いても結果を残す「スーパー営業マン」なのではないだろうか。

 そんな光景を畳職人との現地調査に同行した際、感じたので記事にしました。

迷われたときは畳職人の長年の経験と知識にゆだねるのもありかもしれませんね。

 

 


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