過酷ないぐさの収穫を体験してきました。

過酷ないぐさの収穫を体験してきました。

本記事の最後には動画も掲載しておきますので参考にどうぞ。



 6月22日の朝4時、真っ暗な熊本県八代市千丁町の朝に、機械の低い音が響き渡る。いぐさ農家さんたちの作業に使用する機械の音だ。

今日は私もいぐさを収穫する一連の流れを体験させてもらうため、作業をともにした。

お世話になったのは千丁町の生産者:松島さん。親子2代でいぐさを生産されている。


【釜あげ】


 6月の中旬ごろから約1ヶ月間いぐさの刈り取りますが、始まりの時間はなんと

朝4時。始まりは前日に収穫され、泥につけて乾燥されたいぐさを袋に詰める「釜あげ」から始まる。高温で約12時間乾燥した乾燥室の中はとても暑く、粉塵が待っております。

いぐさ農家さんによってはこの粉で肺の病気を患った人もいると聞いた事があります。




 乾燥されたいぐさを傷つけないように丁寧に袋に入れていきます。生産者の手によって長く育てられたいぐさを傷つけてしまってはいけません。身長ほどにもなるいぐさを袋詰めするのはなかなかの重労働です。


【いぐさの収穫】



 釜あげが終わっていよいよいぐさの収穫のため、畑に向かいます。この時の時刻は

5:30頃でした。広大な八代平野に太陽が上ります。綺麗な太陽を迎えて清々しい気持ちになると同時に、「これからが本番だ」と気が引き締まります。



いぐさの刈り取りは、畑の中を機械でいぐさを刈り取る人、刈り取られたいぐさをかごに詰める人、泥につける人とそれぞれ役割が分担されています。早朝から刈り取られたいぐさは、朝日を浴びて綺麗に輝いています。

※いぐさ刈り作業の順番や方法はいぐさ農家さんによって異なります。

現在は「ハーベスタ」という機械でいぐさを刈り取るのですが、「昔は鎌を片手に全て人間の手で刈り取っていた」と松島さんは語ります。松島さんのいぐさ畑は2.4ヘクタール(野球場2個強分)もあるため、機械で刈り取るだけでも大変なのに・・・。




 7時から8時までの間は朝ごはんの時間です。この休憩時間が終わっていぐさ畑に戻ると、先ほどと状況も変わっていぐさ畑は過酷な現場に変わります。太陽が昇り、気温も30度を軽く超えます。いぐさ畑は水田なので、足元からも蒸し蒸ししているため汗が吹き出ます。また、足場もぬかるんでいるため足が地面にはまっていきます。これが地味に体力を削っていくのがひしひしと伝わりました。



【網あげ・網外し】

刈り取りが落ち着いてきた10時ごろ、今後の刈り取りに備えるためにいぐさにかけられた

網を外していきます。2人1組になり、いぐさにかけられた網を息を合わして外していきます。この時間にもなると、太陽の日差しも鋭くなり体への負担が大きくなります。




網を外したいぐさは倒れ掛かり、その光景は迫力と美しさを感じます。




こなれた手捌きで網と杭を抜いていく松島さん。その姿は職人でした。


1反分(50Mプールくらい)の網あげを終え、この日は11:30に一連の作業が終わりました。


【いぐさ刈りを体験して】


 いぐさ刈りを終える頃には体は土で汚れ、ヘトヘトでした。元高校球児の私ですが、いぐさの収穫作業は高校時代の練習よりも過酷な環境で大変だったと感じました。しかし、いぐさ農家さんはこの生活を約1ヶ月間休みなく行うのです。こうして大変な作業を通していぐさを収穫するのですが、その大変さと現代の「畳離れ」と言われる畳需要の減少からいぐさ農家さんの後継者不足は深刻なものとなっております。

1989年には千丁町で579戸いたいぐさ農家さんは2022年には59戸に、いぐさ畑の面積は733ヘクタールあったのが66ヘクタールへと33年で大きく減少しているのが分かります。

「大変な作業なのに生計を立てるのが難しい」。このような現場を聞いて実際にいぐさ収穫を体験しましたが、それは農家さんからのお話や作業をする中でいぐさ業界が置かれている厳しい現場を肌で感じました。

「国産畳」ができる過程を産地で見てきた私だからこそ、もっともっと畳の魅力を伝えていかないといけないし、生活環境の選択肢の一つに畳が選ばれる世の中にしたい。

日本独自の文化:畳を至高のものへと押し上げるために畳の魅力を伝える旅を続けます。


【風景動画】





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