畳職人の面白いハナシ 〜食事は早く済ませる〜
千葉県のある畳職人さんに食事に連れて行っていただいた時のお話です。
お仕事の話や、いぐさの産地の状況、相場の状況などお話をしながら二人でアジフライ定食を食べていました。話も盛り上がり、非常に和やかに食事をしていたのですが、畳職人さんはあっという間にかなりの量のご飯を食べ切っていたのです。
畳職人からご馳走していただいた、アジフライ。そのお店は「田舎レストラン」と謳っており平日にも関わらず店内は賑わっておりました。
私は思わず、「食べるのお早いですね!」と。
畳職人さんは「職人は食べるのが早くないといけないと、大将から教えられてきたんだよ。」と。その時私は畳職人さんの答えが腑に落ちませんでした。しかし、その後説明してくれると納得がいきました。
どういうことかというと、40年ほど前は畳職人へ毎日なだれのように、団地やアパートの畳の張替え、個人様や工務店、大工さんたちからの仕事が流れて来ていたのです。
当時は、現在のように畳製作機は発達しておらず、ほとんどが手作業だったとのことです。そのため、手作業で畳を寸法に合わせて制作しなくてはならず、早朝から深夜まで
とにかく長時間作業をされていました。また、畳を制作するだけではなく、現場へと赴き
部屋の畳の状況確認や、寸法とり、そして工場へ畳を運搬するなど、とにかく慌ただしかったそうです。
まだまだ当時は、畳の床が藁でできたものが多かったため一枚あたりの重量も30kgだった中、大量の畳を部屋から軽トラックまで持ち運んでいたらしいです。一部屋には最低でも6枚の畳が使われており、アパートになるとそれが数十部屋、そして中にはエレベーターがない建物もあり、階段で運ばれていたことも・・・
想像するところからしても非常に大変なお仕事だったことがわかります。
そのため、休む暇もなく現場を行き来し、工場に戻れば納期に間に合わせるために
少しでも早く畳が製作されておりました。
そんな中、当時修行中だった畳職人の親方は「飯は早く済ませないと、仕事終わらんぞ」
と厳しく指導されていたんだそうです。
今は畳製作機械の技術も発達し、畳も藁の床ではなく軽量な人口素材の畳床が圧倒的に多くなっております。仕事の量も年々減少する中でも、当時の勢いを感じさせるお話でした。

コメント
コメントを投稿